着替え終えた蒼依が居間に入ると、幸弘は部屋の隅で先程の発信機の修理をしていたし、大地は台所で四人分のお茶を入れていた。
先に着替えをすませた隼人は食卓用に並べられている椅子に腰掛け、机に頬杖を付きながら警戒するように二人を睨んでいる。
蒼依が部屋に入ってきた事に気付いた幸弘が修理を中断して話し出した。
「おぉ、着替えたか。まぁ、その辺に座りぃや」
幸弘が隼人の隣にある椅子を指差した。言われた通りに蒼依が座ると同時に、茶を入れたコップ四つを持った大地も現れ、食卓を囲むように四人が席についた。
「ほな、改めて自己紹介でもしよか。俺、稚月幸弘[チヅキ ユキヒロ]!花の十八歳!」
満面の笑みで自分を指差しながら話す幸弘に続き、今度は大地が口を開く。
「僕は千葉大地[チバ ダイチ]。十二歳です。よろしく」
二人の自己紹介が終わったことを受けて、蒼依が少し緊張気味に自らの紹介を始めた。
「えと、私達は……」
「あぁ、あんたらはいいよ。盗聴機から聞き取ったから。徳永蒼依チャンと桐生隼人クンやろ?」
蒼依が言い終わらないうちに、幸弘が明るく言った。その言葉に隼人の目がさらに不機嫌そうに細くなる。
「今までの会話……全部聞いてたのか?」
「そんな怖い顔すんなや。安心しぃ。俺達は仲間や」
「俺はお前らを仲間だなんて思ってない」
「冷たっ!聞いたか、大地!? こいつ、俺が助けへんかったら死んでたのに!」
幸弘が泣きそうな声で大地に訴える一方、隼人はつんとそっぽを向いていた。
落ち着いた態度で幸弘をなだめる大地の姿を見ていると、どちらが年上かわからない。
蒼依がそんな事を考えながら二人を見つめていると、瞬時に常心を取り戻した幸弘が腕組みをしながらボソッと呟いた。
「それにしても……まさか、Separate World内で二派に分かれてしまうとはなぁ。かなり厄介やで」
その言葉で大地の顔が険しく変わり、少し緊張するような声で幸弘に尋ねた。
「向こうは存続派……だっけ?僕にも詳しく教えてよ。盗聴機、幸弘にしか使えないんだもん」