「おぉ、気付いとったか!……しかし、あんたらの目的もSeparate Worldの破壊やとはなぁ。同じ考えの人間が見つかって嬉しいわ」


青年は、にこやかに言葉を続ける。


「俺もあんたらと同じ『Separate World 破壊派』。こんな世界、在るべきやないわ」


青年がそう言い終わったとき、ぴたりと足を止めた。


「到着ー!」


青年の声に蒼依と隼人が顔を上げると、目の前には小綺麗な高層マンションが建っていた。


青年はポケットから鍵を取り出し、扉のセキュリティロックを外して中に入っていく。


しかし、まだ青年を信用しきれていない蒼依達にとっては建物に入る事はためらわれた。密室では、いざという時に逃げられない。


躊躇する二人に、青年が笑いかけながら手招きをした。


「そんな警戒すんなや。俺はあんたらを助けたんやで? 取って食ったりしぃひんて!」


隼人は疑うように青年を見つめていたが、やがて意を決したように蒼依に目を向けて言った。


「入ろう。松下が敵に回った以上、外をふらつくのは危険だ。それに、何かと情報が必要だしな」


蒼依は隼人の言葉に同意し、青年に続いてマンションの奥へと入っていった。


三人は大理石で作られた広間を抜け、エレベーターで三階へ向かう。エレベーターを降りて一番手前の一室の前で青年が立ち止まり、陽気に声を張り上げた。


「ここ!俺の家やの!」


青年はそう言いながら鍵穴に鍵を差し込み、勢いよく扉を開ける。


「ただいまー。大地[だいち]、おるかー?」


青年が中に入るなり、大声を上げた。


その声に反応するように室内の廊下の奥から足音が響く。次の瞬間、正面にあった扉が開き、十歳前後の少年が顔を突き出した。


「おかえり、幸弘[ゆきひろ]。……と、はじめまして」


蒼依達に気付いた少年:大地が礼儀正しく頭を下げた。それに対し、蒼依が慌てて会釈を返す。


「はじめまして!えっと……」


「自己紹介は後や。とりあえず二人は着替えてこい。寝室に適当な服もタオルもあるはずやし」


幸弘と呼ばれた青年が蒼依の言葉を遮り、寝室らしき部屋を指差しながら言った。