にっと笑いながら恭に視線を向ける晴真に、恭が口を尖らせて反論する。


「お前がなかなか答えないから悪いんだろー?それに、あれは単なる威嚇だよ。ちゃんと外したんだからいいじゃん?」


恭はそう言った後、再び隼人に向き直りながら話し始めた。


「俺がお前らと行動して情報を集めていた間に、晴真が色んな地区に廻って仲間を集めてたんだよ。で、今の状態に至るって訳。……納得できた?」


隼人が構えていた拳銃に力を加えながら嫌悪の目で恭を睨んだ。しかし、発砲するわけにはいかない。もし発砲すれば、周りを囲んでいる四人の銃弾が容赦なく襲い掛かるだろう。


そんな隼人の葛藤を見て笑みを広げていた恭が、ふと思い立ったように蒼依に目をやった。


「そうだ。蒼依、前に言ってたよな?『Separate Worldは、大人に見捨てられた子供が来る世界だ』って。あれ、間違いだよ」


「間違い?」


光璃の遺体を抱きしめながら、蒼依がゆっくりと尋ねた。その言葉に恭がいつもの笑顔で頷く。


そしてその直後、瞬時に凍るような目に変わった恭が吐き捨てるように言い放った。


「俺達は大人に"捨てられた"んじゃない。俺達が大人を"捨てた"んだ。帰りたくない人間は俺達だけじゃないはずだ。ここは大人を必要としない子供ばかりが集まる世界だからな」


ぐっと言葉を詰まらせる蒼依に笑いかけた後、恭は再び隼人に視線を移して話し始めた。


「桐生。何でお前がそこまで元の世界にこだわるのか知らねぇけど、この世界を壊されたりしたら困るんだ。俺達の居場所がなくなっちゃうだろ?」


恭が晴真から拳銃を受け取り、隼人の頭に狙いを定めた。


「悪いな。クラスメイトにこんな事したくないんだけどさ……この世界を守るためだから」


恭が妖しく笑みを向けながら、静かに引き金に手をかけた。


隼人の目がせわしく動き、辺りを探る。鉄橋のど真ん中であるため、身を隠す場所もない。恭を含めた五人に囲まれている上に、後ろは深さのある川……どう考えても逃げ場はなかった。


隼人は悔しそうに歯を食いしばり、銃を構えたまま、背後にいる蒼依の元まで後退りしてゆく。