「光璃ちゃん!?」


蒼依が叫び、倒れ込む光璃に駆け寄った。その横で隼人がすばやく拳銃を取り出し、恭に狙いを定めて構える。


「もう少し一緒に行動して情報を得たかったんだけどな。光璃ちゃんが気付いちゃった以上、しょうがないか」


恭は残念そうに呟きながら光璃に目をやった。光璃は蒼依に抱き上げられ、苦しそうに傷口を押さえている。


そんな光璃を助けようと、蒼依が自分の服の袖を破いて傷を圧迫し、懸命に止血を試みた。しかし……


「止血……できない。止まらない!」


涙目になりながら蒼依が呟いた。恭のナイフは、しっかりと心臓を捉えていたのだ。


光璃の目から、どんどん生の輝きが失われていく。光璃は焦点の合わない目で、すがるように蒼依の腕を握った。


「……恭ちゃんを……助けて……」


「しゃべっちゃだめ!!」


「……恭ちゃん……心……泣いてる……」


一語一語を必死で発音しようとする光璃の眼に溢れるほどの涙が浮かんだ。


恭を気遣う、悲しくも強い眼。そんな眼を見て、蒼依の胸が熱くなる。


「光璃ちゃん!お願いだから、しゃべらないで!絶対に助けるから!」


死に物狂いで止血をしようとする蒼依に、光璃が最後の力を振り絞って再び口を動かす。


"裕太くんに 会いたい"


光璃の口の動きから、そう言っているのが読み取れた。涙に満たされた光璃の瞳は、確かに大好きな想い人を求めていた。


その直後、少しずつ光璃のまぶたが落ちていく。


「光璃ちゃん!」


蒼依の必死の呼びかけも虚しく、ついに光璃は息絶えた。


「そんな……」


茫然と光璃の亡き骸を見下ろす蒼依。そんな蒼依の方へと、隼人が恭に銃口を向けながらゆっくり近づいていく。


そして横目で光璃の死を確認すると、最上級の怒りの目で恭を見据えながら口を開いた。


「松下、どういうつもりだ? 答えろ」


「答えろ……か。なぁ、本当に追い詰められてるのってどっちだと思う?」


恭が相変わらずの笑顔でそう言った瞬間……橋の両端から男二人、女二人の計四人の若者が飛び出してきた。隼人・蒼依・光璃を完全に包囲し、全員が銃を構えている。