しばらく歩き、一行は大きな鉄橋に差し掛る。少し老朽して鉄が黒ずんでいたが、とても立派な橋であることに変わりはない。
下には幅の広い川が流れており、時折水の跳ねる音が聞こえてくる。流れは速いわけではなさそうだが……その濁り具合から、かなりの深さがあることが想像できた。
その鉄橋を半分ほど渡り過ぎたところで、急に蒼依が引きつった顔で叫んだ。
「あぁっ!」
その声で、前を歩いていた他の三人が驚きの顔で振り返る。三人を代表して、隼人が蒼依に尋ねた。
「一体なんだよ」
蒼依は隼人の顔色を伺いながら、申し訳なさそうに小さな声を絞り出す。
「桐生から預かってた拳銃……恭の家に忘れて来ちゃった」
「はぁ!?」
隼人が驚愕と怒りが入り交じったような声を上げ、鋭い目で蒼依を射抜いた。予想通りの反応に、蒼依が身構えながら必死に謝った。
「ごめんー!取ってくるから、ちょっと待ってて」
「待てよ!丸腰で行く気か!?」
隼人が呼びかけたが、蒼依はすでに走り出しており、全く聞こえていないようだ。隼人はめんどくさそうに顔をしかめ、恭と光璃の方を振り返った。
「松下、光璃。そこで待ってろ。すぐ戻る」
隼人はそう言うと、急いで蒼依の後を追って行った。
隼人の後ろ姿がしだいに小さくなり、見えなくなっていくのを眺めていた恭が面白がるように呟いた。
「蒼依ってばドジだなぁ」
その言葉の後、恭は突然下に引っ張られるような力を感じ、自身の横を見下ろした。そこには、俯きながら恭の服の袖を掴んでいる光璃がいた。
「光璃ちゃん?どうかした?」
恭がしゃがみ込み、光璃と視線を合わせながら尋ねた。光璃は迷うように目を逸らした後、おどおどと話し始める。
「光璃……全部知ってます。今日の朝、見てしまったんです……」