恭が納得するように頷く中、隼人がさらに話を続ける。
「それに、運営するなら一番大きい中心核の街にいる方が断然有利だ。Separate Worldに来た子供は環境が整った大きい都市に自然と集まるだろうし……問題が起きないか監視しやすいしな」
「この県で一番大きい街ってことは……俺達が住んでた市内か。なるほどねー。これでだいぶ絞れたじゃん」
恭が満足そうに言い、後ろの壁にもたれ掛かった。しかし、隼人は注意深く地図を眺めながら忠告する。
「俺の考えが正しいとは限らないけどな。まぁ、この市になかったら別の市を探せばいいだけだ」
隼人はそのように話をまとめ、言葉を切った。その直後、会話が途切れるのを待っていたかのように蒼依が口を挟んだ。
「ねぇ、朝からあんまり難しい話しないでよ。また眠くなっちゃいそう……」
蒼依が目を擦りながら恭と隼人を交互に見つめた。寝起きなため、余計に頭が回らないらしい。
「要はこの市内に管理局がある可能性が高いって事だ。な、桐生？」
同意を求めるように笑いかける恭に向かって、隼人が素っ気なく頷いた。
「……どこから探しに行きますか？」
光璃が手元にあった別の地図を広げながら、遠慮がちに隼人に尋ねた。
その地図には今いる市内の詳細が書かれている。先程見ていた大ざっぱな県内の地図とは違い、建物の名前や尺度まで事細かに示されていた。
「管理局っていうぐらいだからさ、でっかいビルとかにあるんじゃねぇ!?」
恭が地図上のあらゆる建物を指しながら、少し興奮気味に声を張り上げた。
しかし、この市内で中心的な役割を担っている大きな建物は銀行、デパート、警視庁、駅、県庁、総合病院など……あまりにも数が多すぎる。
ある程度の地理を確認した隼人が顔を上げ、室内の全員を順番に見回した。
「とりあえず……近い所から、しらみ潰しにあたっていく。それでいいな？」
まずは現地点から一番近い『銀行』に向かうことを決め、四人は恭の家を出発した。
