「わ、わかったよ。やればいいんでしょ?」


蒼依は渋々拳銃を構え、大木に狙いを定めた。そして、ゆっくりと引き金を引く。


パンッ!


「わぁ!!」


発砲の衝撃で蒼依の腕が跳ね上がる。そのせいで銃弾は大木から逸れてしまい、隣にあった固い塀にひびを入れた。


「目を閉じるな。ちゃんと狙いを定めろ。それと、しっかり腰に力入れて立てよ」


後ろから隼人の声が聞こえた。


「やっぱ、無理……」


「次!ちゃんと木に当てられるまで終わらねぇからな。集中しろよ」


その言葉通り、隼人は蒼依の弾が大木に当たるまで決して終わらせようとしなかった。


散々しごかれ、やっとの思いで定めた箇所に一発撃ち込むことが出来た時、ようやく隼人から終了の許可を出た。その瞬間、蒼依が安堵のため息をつく。


二人がリビングに戻ると、ちょうど風呂から上がってきたばかりの光璃が出迎えてくれた。


「おかえりなさいです!」


「ただいま!」


光璃の笑顔に癒され、蒼依の顔にも笑みが広がる。その一方で、隼人は顔を曇らせ、カーテンの隙間から外を覗いていた。


「どうしたの?」


隼人の表情に気付いた蒼依が、不思議そうに隼人に問い掛けた。


「なんか、誰かに見られているような気がするんだ。学校にいた時から、ずっと……」


隼人はそう呟きながら戸締まりを確かめた後、再びカーテンを引いてソファーに腰を下ろした。


「光璃。お前は部屋に行って、もう寝ろ」


「ここで寝ちゃダメですか?」


光璃が隼人を見つめながらおずおずと尋ねた。そんな光璃に蒼依が近付き、顔を覗き込みながら口を開く。


「お布団で寝なきゃ、風邪ひいちゃうよ?」


「一人になりたくないです。怖くて寝られないです」


光璃が不安げに俯いている。おそらく、Separate Worldに来てから蒼依達に会うまで、ずっと一人で心細かったに違いない。


「じゃあ、一緒に行こ。眠るまでついててあげる」


蒼依が、光璃に手を差し出しながら笑いかけた。光璃は嬉しそうに頷きながら蒼依の手を握り、二人でリビングを出ていった。