食事を終えた後は、各々が自由に過ごした。恭と光璃はリビングのテレビでゲームをして遊んでいたし、蒼依はソファーに寝転びながら恭の漫画を読んでいる。
そんな中、蒼依がふとリビングの壁に付いている時計に目をやった。
――もう十時かぁ。
蒼依は、思い立ったように漫画を置いて部屋を出ていく。
しばらくして再びリビングに戻ってきた蒼依が、依然ゲームに集中している光璃に声をかけた。
「光璃ちゃん。お風呂沸かしたから、先に入っておいで」
「わかりました!」
光璃が明るい声で返事した。しかし、さっきまで光璃の隣にいたはずの恭の姿がない。
「あれ? 恭は……」
蒼依がそう言いかけたとき、背後から隼人の声が聞こえた。
「あの脳天気バカはどこに行った?」
蒼依が振り返ると、すぐ後ろで隼人が部屋を覗き込んでいた。右手には、整備し終えたのであろう拳銃二丁が握られている。
「さっき、家を出ていくのを見ました」
光璃が玄関の方を指差しながら答えた。隼人は少し顔を曇らせた後、独り言のように呟いた。
「そうか。じゃあ、とりあえず……徳永、ちょっと来い」
隼人の呼びかけに、蒼依が不思議そうに首を傾げた。が、隼人はさっさとリビングを出ていってしまったので、急いで後を追う。
隼人の後ろをついていくと、恭の家の庭に出てきた。隼人はそこで足を止め、くるりと蒼依の方に向き直る。
何事だろう……と怪訝な目をしている蒼依に向かって、隼人が手にしていた拳銃一丁を放り投げた。
「なに?」
受け取った拳銃を見つめながら蒼依が問い掛けた。隼人は答える代わりに蒼依の両肩を掴み、庭の端に立っている大きな木の方へ向けさせた。
「あの木を目掛けて撃ってみろ」
「えぇ!?」
蒼依が驚きの声を上げるが、隼人は腕を組みながら当たり前のように言葉を続ける。
「発砲の練習しておかないと、いざって時に対応出来ないだろ」
「でも……」
「でももクソもあるか。今日の昼に松下に襲い掛かったのが、ゴキブリじゃなくて人間だったらどうなってた? これからだって何が起こるかわからないだろ」