数十分後、蒼依達は校門の前にいた｡
学校の外観も現実世界と全く変わらない。しかし昼過ぎだというのに、生徒のはしゃぎ声も教師の怒鳴り声も聞こえなかった｡
ひっそりとする学校に違和感を感じなから、四人は校内へと足を運ぶ。下駄箱を過ぎたところで隼人が言葉を切り出した。
「とりあえず、職員室に向かうか。一番情報が集まる場所だろうし」
それに他の三人も同意する。しかしその後、恭が少し言い辛そうに口を開いた｡
「なぁ。俺、保健室に行ってきていい？ さっき打ったとこにコブ出来ちゃったみたいでさ。冷やしたいんだ」
恭は、顔をしかめながら後頭部を押さえている。
そういえば、恭がこの世界に来た時に『ゴン』と鈍い音がした。あれは、頭を打った音だったらしい。
「私も一緒にいこうか？ 保健室には詳しいし」
蒼依が恭の肩を軽く叩き、笑顔を向けた｡
「おぉ！さすが元保健委員！」
恭が蒼依に小さく拍手した。その傍らで、隼人が腰に手をあてて考えた後、決断したように顔を上げる｡
「二手に分かれるか。俺と光璃は地図を探しに行くから、松下と徳永は保健室行ってこい。使えそうな薬があったら、ついでに持ってきて」
「わかった。じゃあ、終わったらここで待ち合わせしよ」
蒼依の言葉に全員が頷き、四人は二手に別れて歩きだした｡
職員室に向かう隼人と光璃は北校舎を目指し、渡り廊下を渡っていた。
「職員室って、どこにあるのですか？」
光璃が少し緊張気味に隼人を見上げた。隼人の放つ威圧的な雰囲気は、見事に光璃を飲み込んでしまったらしい｡
「この廊下を渡った二階だ」
隼人は進む道の先から目を離さずに答えた。が、次の瞬間……何かに気付いたように立ち止まり、勢いよく後ろを振り返った｡
「どうしたですか？」
光璃が眉を上げて問い掛けた｡
「……いや。今、誰かの視線を感じたような気がしたんだけど」
隼人が、"誰か"の正体を探るように目を細める。しかし、人影など見当たらない｡
少し腑に落ちない顔をしていた隼人だったが、立ち止まっているわけにはいかないと結論を出し、再び歩きだした｡
