「なんだこれ?」
恭が不思議そうに封筒を拾い上げた。
「恭。それ、開けてみて」
蒼依が封筒を指差しながら促した。
恭が開けた封筒の中には……やはり1枚のカードが入っていた。蒼依が受け取ったものと同じ内容だ。
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ようこそ、Separate Worldへ
徳永蒼依様、あなたは17人目の住人です。
徳永遥香様・徳永蒼依様が共に"互いの必要性"を失われたため、Separate Worldにて、あなたをお預かり致します。
あなたはここで自由に生きてください。あなたが望んだ、"大人のいない世界"で。
再び両者が必要性を見出だすことがあれば、あなた方は再会を果たせるでしょう。
あなたがこの世界で幸せを見つけられることを、心よりお祈りしております。
Separate World 管理局
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それを見た恭の頭の上に、無数の『?』マークがとんだ。そんな恭を見かねて、蒼依が説明を始める。
「恭。ここは『Separate World』っていって、大人に見捨てられた子供が来る世界なの。ここに来る前に何かなかった?」
蒼依の質問に、恭の顔がひどく曇った。
「……母親と喧嘩したんだよ」
恭が短く答えた、その時……
「恭ちゃん?」
小さい声が聞こえ、室内の全員が振り返ると、先程の少女が部屋の扉から顔を覗かせていた。その少女に目をやった恭が眉を上げながら口を開く。
「もしかして、光璃[ひかり]ちゃん?」
恭の言葉に、光璃と呼ばれた少女が顔を綻ばせた。その様子を見た蒼依が、不思議そうに尋ねる。
「恭、知り合い?」
「あぁ、光璃ちゃんは裕太[ゆうた]の友達。時々俺ん家に遊びにきてたんだ」
裕太とは恭の六歳下の弟のことだ。