果てしなく続く木製の廊下は歩く度にギシギシと軋み、その家に少し年季が入っている事を象徴していた。


しかし、その音は蒼依達の周りでしか聞こえない。やはり、ここにも大人はいないのだ。


「ねぇ、桐生の親って社長か何か? 家、でかすぎでしょ」


沈黙に耐えられず、蒼依が隼人に尋ねた。


「父親が代議士やってんだって。あんまり詳しくは知らねぇけど」


「詳しく知らないって……家族なのに?」


「んなこと言ったって、ほとんどしゃべってなかったし。俺もあいつも、互いに興味がねぇんだよ」


隼人は、嫌な事でも思い出すように顔をしかめながら呟いた。


「ふぅん……」


――Separate Worldって、大人と子供がお互いを『いらない』って思ったら来ちゃうんだよね。

だったら、桐生がここに来たのって……もしかしたらお父さんが原因なのかな?


蒼依がそう考えた直後、二人は居間のような一室にたどり着いた。


隼人は肩に掛けていた鞄を机の上に下ろし、無言のまま台所の方へ姿を消してしまった。


隼人の背中が見えなくなった後、蒼依はへたりと座り込む。張り詰めていた糸が切れ、一気に疲れが出たのだ。


机の上にある隼人の鞄に目をやると、何か黒いものが鞄の口から顔を覗かせていた。好奇心に負けて中を探ると……


「カツン」と固そうな音を立てて、一丁の拳銃が机に転がった。


――なに……これ。


しかし、鞄の中に入っていたのはそれだけではなかった。鞄を逆さにひっくり返すと、中から次々と武器が出てきたのだ。


拳銃三丁に手榴弾五個、銃弾の入ったケース、小型ナイフ等々……


あんぐりと口を開けてそれらを見つめていると、台所に行っていた隼人が茶のペットボトル二本を片手に帰って来た。


「あぁ、それはあんまり触んな。危ないから」


隼人はそう言いながら、持ってきたペットボトル二本のうちの一本を蒼依の前に置き、自分も腰を下ろした。


「何でこんなもの持ってるの!?」


ほとんど叫びに近い蒼依の声に、隼人は耳を押さえながら不機嫌そうに答えた。


「何でって……護身用だよ。一昨日、警視庁行ったついでに盗んで来た」