卒業しないで欲しい。
あと1年、留年して一緒に卒業して欲しい。

…まだ行かないで。

そんな思いが溢れかえる。

「フラオブは止めないけど、引退。」

「せ、先輩…。」

「旅立ちって、とても怖い。」

だから卒業したくない。

「…先輩にも怖いものあるんですね。」

必死に涙をこらえた。

「もちろん。あたしは人間だから。」

先輩は立ち上がって、フェンス越しに外の道を見る。

自転車の音がした。

「本番10分前ー。アウト。」

「セーフだろ。」

雪比良部長…あ、いや先輩の姿。

遅刻したのは雪比良先輩の方らしい。