この街を出るのも違う場所に住むのも、簡単だとは言わないけど出来ないことじゃない。

離れられないんだろうな、俺は。

「まだ決定はしてない。ドラマーの奴が陸上とこっち、どっちにするか迷ってるし…。ヒロナも親と色々あるみたいだから。」

「…そうか。」

「でも、もしも。行くってなったら反対する?」

心配げに揺らぐ瞳。

「もちろんな。」

それに揺れない俺がいた。

高校出て音楽一本でやっていくなんて不安定すぎる。

大学に行くにしろ、両立するのは難しくて疎かになりそうだ。

簡単に行っても良いなんて言わない。