歩き慣れている透子は、上の空。

「何か言いたいことがあるんじゃないか?」

家を出る時、葛さんに羨ましがられた。

『良いなぁ、あたしも今度デートしてもらおうっと!』

あの人も無邪気に笑う…。

頭に浮かぶ回想は、あまり関係はないもので。

「え。」

図星なのか、ぎょっとした顔でこっちを見る。

「…この前、高校最後のライブをやって。」

「へぇ。」

春のライブを初めて見に行ったけど、沢山の観客がいた。

人気がある。それを一瞬で悟る。

「スカウトされた。」

…な。