俺が入ってきたのに気づいていないのか、窓の外をじっと見ているらしくこっちを向かない。
夏服の白いセーラー服の下に覗く白い細い腕には包帯が巻いてあった。
「…透子。」
呼ぶとピクリと肩が反応してゆっくりとこっちを向く。
目に色がない。
さほど驚きはしないけど不安になる。
…この子は意外にネガティブだから。
「帰ろう。」
「…怪我した奴の親、喚いてたね。なんか言われた?」
「良いよ、お前は悪くない。」
…実際、確かに透子は暴れたけど原因は向こうにある。
担任が問い詰めても言わなかった元凶の男子は、さっきのヒロナと呼ばれていた女子生徒と一緒にいた男子生徒に吐かされたらしい。