離婚後、父との生活が始まり
戸惑いながらも上手くやってた。

だが数ヶ月もすれば
嫌でも慣れて来る。

父は昼間仕事な為
学校から帰って来たら
家事をやるのが日課だった。


こんな日常が崩れたのも
束の間だった。

父が仕事でのストレスを
あたしに当たるようになり
酒を飲んでは気に入らない事を
怒鳴り散らすようになった。

夕飯を作っても文句。
洗濯をしても文句。

毎日毎日、文句。


文句言われてる頃は
まだ全然ましだった。




文句を言われ慣れてしまったあたし。
相手にするのも疲れるので
上手く流すようになった。

その態度が気に入らなかったのか
ついに手を出すようになった。

髪の毛を引っ張られ
殴る蹴るなんて当たり前。

最初は恐怖で何もできなかった。

人間って怖い。

手を上げられる事に
慣れてしまった。

反抗しても、さらにやられる。
なら反抗なんてしない。

そう決めた。

父は制服から出ないような
太ももの付け根や脇腹
背中、二の腕など
他人には気付かれない場所を
傷付けた。

周りにも話さず、周りも気付かず
ただ時間は過ぎていった。








さようなら、パパ









流石のあたしも
我慢の限界だった。

どうするか悩んだ結果
当時付き合って居た彼氏の家に
お邪魔する事になった。

彼氏は19歳で1人暮らし。
付き合って間もなかったが
頼る所はそこしかなかった。


夕方、夕飯を作り、お風呂掃除し
必要最低限の物を持って
家を出た。




彼氏は夜中に大勢で
バイクで走り回ってるような人。
あたしはどちらかと言うとまじめ。

警察に追い掛けられ
捕まるかもしれない事を
堂々とやる彼氏。

自由奔放でやんちゃで
楽しそうで羨ましかった。

仲間になりたいと思って
金髪にして、ピアスを開けて、
煙草を吸い、無免許でバイクに乗り、
お酒も覚えた。

一瞬にして
一種の不良になった。

皆が優しくて
あたしの居場所はここなんだと
思う位、最高に楽しかった。

その時の彼氏が
処女を捨てた相手。


中2の夏の事。





ある日知らない番号から
着信が入っていた。

下4桁が0110。
警察からだった。

留守電を聞いてみると
捜索願いが出されてるとの事。

家出してから早1ヶ月。

ついに警察までもが
動き出した。

もう1件知らない番号から
着信が入っていた。

携帯の番号で留守電は
入っていない。

たまたま携帯を弄ってる時に
かかって来て間違えて
通話ボタンを押してしまい
無言で携帯を耳に近付けた。

受話器の向こうから
聞いたことの無い女の人の声。

"私はあなたを産んだ"

耳を疑った。
あたしを産んだ母からの電話だった。

"パパには言わないから居場所を教えて"

その言葉を信じ、住所を教えた。

数時間後、着いたと連絡が来たので
外へ出ると、やっぱり知らない女の人が
車の中からこっちを見てる。

"初めまして。…じゃ無いけど(笑)"

軽く挨拶をして
どうして母が今目の前に居るのか
話をしていた。

父の連絡を完全に拒否ったあたし。
学校で連絡網が周り、警察へ行ったが
手掛かりが掴めず、父が"お前なら…"と
母に頼んだらしい。

あたしと母は不思議な再会をした。




色々と話し合い、父は二度とあたしに
手を上げないと約束し家に帰った。

それと同時に彼氏と別れた。

家に帰ったのはいいが
2ヶ月近く学校に行ってなかった為
そのままあたしは登校拒否をした。

髪も金髪のまま。
煙草も止めず、地元では
ただ目立っていた。

女友達なんて居ない。
仲良いのは不良の男の先輩。

夜出掛け、朝に帰り
昼間寝て、夜出掛ける
これの繰り返し。

まともにご飯も食べず
2ヶ月ちょっとで9㎏落ちた。

そんな中また事件が起きた。








いっその事

殺してよ









あたしの生活態度に
父もいい加減我慢の限界だったんだろう。

ちょっとした事から喧嘩になった。
いつも通りの口論。

でもその日だけは違った。



"俺が全部悪いんだろ?"
"今すぐ俺を殺せばいい"


耳を疑った。
包丁を差し出されたあたし。

どうする事もできず
自分の部屋に籠もったが
無理矢理引きずり出され
殺せとお願いされた。

確かに恨みや憎しみはあるが
父を殺す理由は無い。

あたしが何もできずに佇んで居ると
父が近寄ってきた。