あたしは父親、幼い妹は義母のもとへと決まった。
義母というのは
父があたしがまだ幼い頃に
再婚した相手だから。
妹は再婚後にできた子なので
実母にあたる。
離婚原因は父の家庭内暴力。
なんだかんだ上手くいっていたと
思っていたけど昨年から別居。
別居生活が1年続いた。
その間も妹とは離ればなれ。
それが何よりも辛かった。
父が離婚届に印鑑を押した日が
妹に最後に会った日となり
それ以来、声も聞いていない。
元気にしてるかな?
ご飯食べてるかな?
学校は行ってるかな?
色んな事を考えた。
心配で心配で
どうにか会わせてもらえないか
義母にお願いしたが
首を縦に振ってはくれなかった。
友達の弟が妹と同じ小学校だったので
妹の事は友達の弟から聞くしか
手段がなかった。
当日妹が小学校1年生の時の事。
あたしの事
覚えててくれてるかな…?
うちの父は酒乱。
DV ―家庭内暴力―
離婚後、父との生活が始まり
戸惑いながらも上手くやってた。
だが数ヶ月もすれば
嫌でも慣れて来る。
父は昼間仕事な為
学校から帰って来たら
家事をやるのが日課だった。
こんな日常が崩れたのも
束の間だった。
父が仕事でのストレスを
あたしに当たるようになり
酒を飲んでは気に入らない事を
怒鳴り散らすようになった。
夕飯を作っても文句。
洗濯をしても文句。
毎日毎日、文句。
文句言われてる頃は
まだ全然ましだった。
文句を言われ慣れてしまったあたし。
相手にするのも疲れるので
上手く流すようになった。
その態度が気に入らなかったのか
ついに手を出すようになった。
髪の毛を引っ張られ
殴る蹴るなんて当たり前。
最初は恐怖で何もできなかった。
人間って怖い。
手を上げられる事に
慣れてしまった。
反抗しても、さらにやられる。
なら反抗なんてしない。
そう決めた。
父は制服から出ないような
太ももの付け根や脇腹
背中、二の腕など
他人には気付かれない場所を
傷付けた。
周りにも話さず、周りも気付かず
ただ時間は過ぎていった。
さようなら、パパ
流石のあたしも
我慢の限界だった。
どうするか悩んだ結果
当時付き合って居た彼氏の家に
お邪魔する事になった。
彼氏は19歳で1人暮らし。
付き合って間もなかったが
頼る所はそこしかなかった。
夕方、夕飯を作り、お風呂掃除し
必要最低限の物を持って
家を出た。
彼氏は夜中に大勢で
バイクで走り回ってるような人。
あたしはどちらかと言うとまじめ。
警察に追い掛けられ
捕まるかもしれない事を
堂々とやる彼氏。
自由奔放でやんちゃで
楽しそうで羨ましかった。
仲間になりたいと思って
金髪にして、ピアスを開けて、
煙草を吸い、無免許でバイクに乗り、
お酒も覚えた。
一瞬にして
一種の不良になった。
皆が優しくて
あたしの居場所はここなんだと
思う位、最高に楽しかった。
その時の彼氏が
処女を捨てた相手。
中2の夏の事。
ある日知らない番号から
着信が入っていた。
下4桁が0110。
警察からだった。
留守電を聞いてみると
捜索願いが出されてるとの事。
家出してから早1ヶ月。
ついに警察までもが
動き出した。
もう1件知らない番号から
着信が入っていた。
携帯の番号で留守電は
入っていない。
たまたま携帯を弄ってる時に
かかって来て間違えて
通話ボタンを押してしまい
無言で携帯を耳に近付けた。
受話器の向こうから
聞いたことの無い女の人の声。
"私はあなたを産んだ"
耳を疑った。
あたしを産んだ母からの電話だった。
"パパには言わないから居場所を教えて"
その言葉を信じ、住所を教えた。
数時間後、着いたと連絡が来たので
外へ出ると、やっぱり知らない女の人が
車の中からこっちを見てる。
"初めまして。…じゃ無いけど(笑)"
軽く挨拶をして
どうして母が今目の前に居るのか
話をしていた。
父の連絡を完全に拒否ったあたし。
学校で連絡網が周り、警察へ行ったが
手掛かりが掴めず、父が"お前なら…"と
母に頼んだらしい。
あたしと母は不思議な再会をした。