帰り道は、すごく早くて。


もう別れる道の角が見えてくる。





「…ん」



元が、あたしにいびつな黒い傘を押し付けるようにして差し出した。



「…え……、いい!元が濡れちゃうじゃん」



その傘を押し返したあたしに、元は下を向いたまま…言った。


「麻子が、風邪ひいたら…困るし」



強引に押し付ける腕。



「…てそれ、元もじゃん」


「馬鹿は、風邪ひかねえから」



あ、自分で認めてる。



そう言って少し笑った元は、あたしに黒い傘を渡し去っていこうとした。






「…っ……待って!」


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