また訪れた沈黙を、麻子が解く。
「…あたしがこの続きを聞いたら…」
弱々しい声が、いっそう弱くなって…そして…
「田原くんは……っ…今まで通りに接してくれないでしょ…っ……?」
滲んでは、夕闇に溶け込んでいく麻子の声。
その夕闇に精一杯抵抗するかのように…俺は拳に力を込めた。
「…麻子、大丈夫だから」
大丈夫だよ。だって…
「…なにも変わらないから、1つだけ…俺の気持ちを聞いてほしいんだ」
俺が君を好きな気持ちは、本当だから。
だから…大丈夫だ。
俺は、麻子に向き合った。
麻子も少し潤んだ…でもしっかりと俺を映した目を、俺に向ける。
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