「……え…」
いきなりのことに驚いて、手から滑り落ちたボールペン。
瀬川さんはそれを拾って俺の手に戻しながら微笑んだ。
「田原くんって、いっつも仕事やってくれてるよね」
一瞬余裕がなくなっていつもの平静さを失った俺だったが、すぐに『田原くん』に戻って笑みを返した。
「そうかな?…瀬川さん、部活行かなくていいの?」
瀬川さんは少し残念そうに眉を下げて微笑んだ。
「今日は休みなの」
二人でやると、やっぱり手際がよくて何倍も早く終わった。
「「うーん…」」
…二人とも同じタイミングで、伸び。
思わずお互いに吹き出してしまった。
「瀬川さん、ありがとう」
なんだか本当に嬉しかったんだ。
「ううん、どういたしまして!」
瀬川さんは笑って、椅子から立ち上がるとドアに向かって歩き出す。
その背中を目で追いながら、急いで声をかけた。
「瀬川さん、バイ…」
「…田原くん」
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