『今日の帰り、大事な話がある』
そうやって取り付けた、麻子との帰りの時間。
「おまたせ!」
体育館から急いでこちらへ走ってきた麻子の頬は、ほんのり赤い。
少しハネた前髪を必死で押さえつける様子がすごく…可愛くて。
思わず口元が緩む、自分がいた。
「そんな走ってこなくてもよかったのに」
「だって、待たせたら悪いよ」
麻子はまだ息を切らしたまま俺に笑いかける。
「さっき職員室で林田先生に捕まっちゃってさ。ちょうど俺も、さっき終わったとこなんだ」
俺が疲れたようにおどけてみせると、麻子も赤い頬で明るく笑った。
「田原くん、お気に入りだもんね」
.