「あの、ケーキってまだ余ってますか?」

一人の男性がやってきた。

すごく若くて、私と同じくらい?

この男性のおかげで、我に返った。

「もっ、申し訳ありません。先程売り切れてしまって・・・」

深々と頭を下げる。

「そうかあ、やっぱり遅かったよね・・・『澪ちゃん!このケーキもよろしく!』

お客様が、あきらめて帰ろうとしたとき、店長が大きな箱を抱えて私に話しかけた。

「え!?ま、またですか!?」

寒い中で、やっとの思いで完売したのに。

「今度は、チョコレートケーキ。売り込み頼むよ!」

店長は、私の肩をポンッとたたき、店の中に入ってしまった。

ハァとため息をついた。