「山川さん。」

一人の女の人が話しかけてきた。

パティシエールだ......

綺麗な人で、私より少し年上くらいで若々しかった。

この人もまた、甘くていいにおいがする。

「なんで、ここに?」

女の人は不思議そうに聞いた。

「スカウト.....ですかね。さっきまで違うケーキ屋のバイトしてたんですけど、店長に連れてこられちゃいました......」

「スカウト!?み、みんなきいて!!この子スカウトされてきた子だって!」

この人の言葉にまたもざわめきが。

恥ずかしい~!

「店長のスカウトって相当だよ!きっとスゴ腕の持ち主だよ!」

どこからか、そんな声が聞こえた。

スゴ腕なんて。

ありえない。

「ケーキなんて作ったことないのに、スカウトされちゃって。変ですよね。」

ハハハと私が苦笑いする。

「変じゃないよ。店長がスカウトする子は接客がうまい子だけだし。ケーキの作り方や技術は僕たちパティシエが教えてくから!」

「ちょっと、私たちパティシエールも忘れないで頂戴!」

この場にどっと笑いが起こった。