「だって……分かんないんだもん」

そう漏らしながら、テーブルの上に在る原稿用紙へ目を落とした。 自分の気持ちを正直に並べてこうなったのに、何がどう悪いか全く分かんないよ。

そりゃあ『進路』になんか触れてないけど、もともと実景の夢は大学なんて必要ないし、就職なんてしたら不利になるだけ。

だからそもそも書くことなんてまったく無いのに……。

「望助のばか」

「誰だよ望助って」

「アレじゃん? 実景の担任……確か望月 孝助でしょ」

「む~……」

梨香のツッコミと百のフォローを耳に入れつつ、実景はやる気も何も無くなりテーブルの上に顎を乗せて適当な紙に落書きをしていた。

「――ったく」

そんな実景を見て流石の梨香も諦めたのか、それとも元来の面倒見の良さが出たのか、

「とりあえず頭から整理するぞ」

どうやら実景の作文を手伝ってくれるらしい。

「うんっ」

梨香の助けてもらえばきっと百人力だね! 実景は途端に元気が出てきて今まで下げていた顔を上げた。

「現金な奴だな」

「単純で良いんじゃん?」

なんて二人は呆れてるけど、文句を言いながらも助けてくれる梨香と百が実景はやっぱり世界で一番大好きなのです。













「とりあえず先に言っとくけど、ごちゃごちゃ考えすぎんなよ」

「え? う、うん」

整理するためにルーズリーフとシャープペンシルを持った所で、梨香が突然実景に言った。 そして百もそれに続くように口を開いた。

「実景は考え込んだってまともに答えが出るはず無いんだからもっと簡単に考えた方が良いんだよ」

そして極めつけに二人揃って、

『馬鹿なんだから』

と息ぴったりに言ってようやく実景の作文救出会議が始まった。

それにしても……普段はあんまり息合わないのにどうして二人とも実景を弄るときだけ見事に呼吸が合っちゃうんだろ?

なんか凄いと思う。







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