「それで遅刻したのか」

高校生が溢れる放課後のマックで実景の親友①黒崎 梨香が盛大に溜め息を吐いた。 梨香の目の前には溜め息と同じくとっても盛大な鬼盛ポテトがあった。

「いや、てゆーか実景……コレは無いよ」

そして次に実景の作文を見ながら呆れ返った声を出したのは、親友②青木 百。 百の目の前には普通にサイドメニューまで付けたバーガーセットが置かれている。

「でも実景はちゃんと書いたつもりなんだもん」

そして実景の前には大好きなシナモンメルト! 熱々のパンの上にシナモンとバターとアイスが乗っててすっごい美味しいの。

そんなシナモンメルトを目の前に、実景は二人から作文のアドバイスを聞こうと作文を読んでもらっている。

「書いたつもりなんだもん……じゃねぇ! 明らかちゃんとはしてねーだろ」

「そもそもさ、作文のテーマって何さ? それ分からなきゃアタシ等も特に何も言えないし」

「それが……」

絶対テーマの事は聞かれると思ったけど、まさかこんなに早い段階で聞かれるとは思ってなかった実景は一瞬言葉に詰まった。 もしここで「分かんない」なんて言えば梨香からどんな制裁を受けるかはなんと無く予想がつくし、何より……すっごいカッコ悪いんじゃないかな?

「実景~?」

百の催促的な呼び掛けに思わず顔を反らすと、

「……まさかテーマ分かんないとか?」

苦笑いを含んだ声で百が核心をついてきた。 そして実景の反応を見て真実だと理解したのだろう、乾いた笑いを溢してハンバーガーに手を伸ばした。 もう声も出ないという感じだ。

「っつーかテーマ分からないって来られたってウチ等に分かるわけないじゃん。 そもそも学校違うだろ?」

「……うん」

そう、梨香の言う通り実景達は皆学校がバラバラ。 望んでそうなった訳じゃ無くて梨香は親の言う通りの高校へ進んで、百は昔から行きたかった高校へ行って、実景は二人がバラバラなら実景も違う所にって今の高校に進んだ。

学校が違うからって実景達の縁が壊れるわけ無いって信じてたから。 その証拠に高校生になって二年目に突入した今でも二人以上の仲の良い人は居ないし作る気もない。

実景にとっては梨香と百が一番で、ずっとずっと何より『大切』だから。




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