ここは学校で一番に近付きたくないところ、先生達の密集区職員室。 こんな所で実景は今一体何をしてるかと言うと……


「白田……」


「はいっ」


何故か担任である望月先生に呼び出しをくらっています。

呼び出しくらうようや悪い事はやってないと思うんだけどな……と、頭に思いっきり疑問符を浮かべながら、実景は先生の言葉を待った。

そしてほんの三十秒程間を置いて望月先生は溜息を吐きながら口を開いた。

「お前な、昨日のLHRの時に作文書いたろ?」


「……?」


作文なんて書いたっけ? そんな事を考えていると、恐らく望月先生は実景の表情から作文なんて覚えてない事を悟ったのだろう、

「お前が昨日ものの五分で仕上げて挨拶もせずに学校を勝手に去ったヤツだよ」

「あぁっ!」

そこまで聞いて実景はようやく思い出した。 そして望月先生に呼び出された理由も何と無く分かった気がする。 多分、きっと……絶対昨日無断で帰ったからだ。 というかそれしか思い浮かばない。

「あの、昨日はその作文書いててすっごーく良いメロディーが浮かんじゃって、早く実景のアコ太郎で試したくなっちゃって……」

ちなみに『アコ太郎』とは実景のギターの名前。 アコースティックギターの一代目だから『アコ太郎』

「……今はその事で呼び出した訳じゃないぞ。 確かに無断下校は駄目だけどな」

必死に見つけた呼び出し理由は的を外れた様で、望月先生はまた盛大な溜息を吐いた。

そして紙が大量に散らばっている机の上から迷いもせずに一枚の紙を取ると、実景の顔の前に突き出した。


「何コレ?」


「よく見れば分かるだろ」


望月先生の言う通りに良く見てみれば、見慣れた丸文字に見慣れた名前……それは実景の昨日書いた作文だった。


「やり直し」


望月先生は実景の顔の前にあった作文を無理矢理持たせると、


「ちゃんとテーマに沿った作文書いて来い。 提出期限は来週。 そんだけあれば十分だろ?」

一気に要点だけを説明して職員室から立ち去ってしまった。

「……テーマ?」

だけど先生……実際問題『テーマ』って何だっけ?


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