立ちたいのに、立てない。

本格的にやばい。


もう駅に着くのに。


どうしよう。


「お姉さん、大丈夫?」


うん?


幻聴?


「もしかして、おりたいの?」


幻聴じゃなくて、目の前の男の子から聞こえる。


「ねぇ、おりたいの?」


何?


「うっうん。」


とりあえずうなずく。


電車が静かにとまる。


「行くよ。」


男の子は私を支えて、電車からおろしてくれた。


「椅子すわるよ。」


ホームのベンチに座らされる。


「体熱いよ。
様子がおかしいなと思って、見てたんだよね。
やっぱり熱あるね。」


だから目の前にいたんだ。


いい子ね。


「これからどうするの?」


そんなの、もちろん家に帰るわよ。


「家。」


辛くてうまくしゃべれない。


「迎えに来てくれる人いる?」


そんな人いない。


私は頭を横にふる。


「うーん、どうしようか?
俺、知り合いでもない人、これ以上助けるほど優しくないんだよね。」


俺?


なにイキがっちゃって、俺より僕の方がよっぽど似合うわ。


助ける?


電車からおろしてくれただけでじゅうぶんよ。