電車の揺れが気持ち悪い。


ムカムカする。


やばい吐きそう。


もうすぐ駅に着くから、がんばれ私。


完全にうつったな。


先週、達也[タツヤ]、吐く風邪で何度も吐いてたからな。


千春[チハル]がうつらなくてほっとしてたのに、私がうつるとは。


頭がガンガンする。


熱でてるなこれ。


あー、やばいな。


うん?


なんだか視線感じる?


熱のせい?


いや違う。


空いてる朝5時の電車。


座ってる私の目の前に立ってる男。


席、めちゃくちゃ空いてますけど?


何か用ですか?


それとも痴漢ですか?


辛くて下を向いていた顔を上げ、顔を見てやる。


どんな男だ……あれ?


中学生?


目の前にいたのは、可愛い男の子だった。


じっと私を見つめる男の子。


えっと痴漢じゃ、ないよね。


知り合い?


私の知ってる子?


親戚の子にいたっけ?


頭の中には、大きなはてなマークでいっぱい。


まったくわからない。


あー、頭使ったから、さらに熱上がったわ。


もういいや、駅着くし、下りよう。


考えることを放棄した。