「瞳。」



隣を歩く瞳を呼んでみる。


でも何故か無視される。
というか、瞳…怒ってる?



「瞳、なんか怒ってるか?」


「べつにー。」


「なんでこっち向かないんだよ。」


「ふんだ。」



完全にふててるぞ。


ふててるけど、可愛いし。



「何で怒ってんの。」


「孝幸なんか知らない。」


「ったく…」



瞳の機嫌を直す方法は知ってる。


泣いてるときにも、これをやると
ピタッと涙が止まるんだ。



――――――チュッ。。


瞳のおでこに軽くキスを落とす。



「機嫌治った?」



俺を上目遣いで見上げると小さく頷いた。

そして、手をつないでまた歩き始めた。



「孝幸が女の子と一緒にいるから…」


「え?」


「嫌なんだもん。」


「瞳…。」



潤んだ目でそう言った瞳。


俺は瞳のそんな姿がどうしようもなく愛おしく感じた。


抱き締めたくなった。


今までずっと一緒にいたけど、初めての感情だった。