雪が降った。クラタさんはしばしばらしくない言動をとるようになった。いつもの場所で外を見ているのだが、ときどきため息をついたり、さみしい、などとおかしなことを言ったりするのだ。

 クラタさんに誘われて窓の外へ出た。クラタさんはひとりでいるかのように黙々と真っ直ぐに先を行く。その真っ直ぐな背中は振り返りそうもない。
 窓からあそこが見える、とクラタさんは小さな公園の青いベンチを指した。座ってみよう、そう言うとクラタさんはベンチに向かって歩いて行った。
 クラタさんはベンチの雪をすべて払い落とし、わたしに手招きをする。