「考えごと?」

 藤美教諭は目を大きく見開いた。

「一人の生徒のことを考えていまして」

「高基先生って仕事熱心ですね」

「いや、それほどでもないです」

 高基教諭は笑った。ひとみのことなどなかったようにである。

「謙遜しなくてもいいですよ。高基先生って、実はクラシックにあまり興味ないでしょ?」

 藤美教諭は話題を急に変えた。

「図星です。でも、まったく興味がないわけではないです。ちょっと興味を持ち始めたのは事実です」

 高基教諭も予想していなかったことなので、本音を言ってしまった。