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「健気だねぇ…」


里緒菜の後ろ姿を見ながら先輩が呟くように言った


「…そうっすね…」


「里緒菜ちゃんじゃなくて…お前だよ」


「…は?」


「…あのなぁ、恋愛ってのはよ、相手に自分の気持ちを伝えてなんぼだろ」


「べっ別に俺は…」


慌てる俺を鼻で笑って、真人先輩は言った


「…それに…慶吾は無理だ」


…無理…?

どういう意味だ?

里緒菜じゃ相手にされないってことか?



先輩は俺の考えを見抜いたように話し続ける


「慶吾には好きな女がいるんだ…忘れられない女が」



忘れられない女…

…それ…もしかして隆司の



「…お前のダチの彼女だよ」


…やっぱり




「…けど、時間がたてば」

「いや…そういう問題じゃない」




…どういう問題だよ

里緒菜が傷付くのだけは見たくない


そのために、里緒菜の力になってやるんだって決めた

それが俺の気持ちを大事にすることにも繋がるから



「じゃどういう問題なんですか?」



「似てるんだよ里緒菜ちゃんは、慶吾の前カノに」



「………」



「…多分、タマの世話係もそれが理由だと思う」



…何だよそれ…

あんなに嬉しそうだったのに…



そんな理由かよ


「まぁ頑張れよ」


先輩は俺の肩をポンと叩いた



頑張れよ…って言われても俺には何も出来ねぇ


今までみたいに近くで見守るくらいしか


ふざけあって馬鹿やって、

幼馴染みで


自分の気持ちと向き合うことにしたけど

いきなり恋愛モードになんてなれねぇし


気持ちを伝えて、里緒菜が離れていったら


俺には耐えられない


結局俺は…

弱虫のチキン野郎だ…



「…はぁ」


ベンチに座って、おもいっきり上を見たら、




泣けてくるほど青い空が広がってた。