「んな驚くなよ」



さっきまで慶吾先輩同様、女子に囲まれていたはずの人が


こんな人気のない、公園の端にいるなんて驚かないほうが無理だ




「んで?俺のはないの?」


真人先輩は悠登の持っているお弁当を指差している


「……………」


「んなマジな顔すんなよ、冗談だから」


真人先輩が言うと、冗談に聞こえないから困る


「真人先輩は昼飯どうするんですか?」

「俺?俺はこれっ」


真人先輩は手に持っていた紙袋を持ち上げた


悠登と目があった




(あるんじゃん弁当)


…そう思ったんだよねきっと


「彼女の手作りなんだ」


「彼女いるんですかっ?」


今まで真人先輩に、特定の彼女がいるなんて情報は聞いたことがなかった


情報通の真紀からでさえ、聞いたことはない


「…失礼だなぁ…、いるよ付き合って二年になる」


「そんな前からっ」


「…まぁ知らなくても当然か、取り巻きの女どもの手前、ずっと秘密だったし」

「そういえば、女子のみなさんはどこに行かれたんですか?」


「…まいた」


「………」


「だってよぉ、あいつらがいたらゆっくり出来ねぇだろ、うまい空気もまずくなるっつうの」



(…本性丸出し)



「慶吾だってタマ連れて逃げたぜ、多分この辺にいると思うけど」



「…この辺に…」




「ほら里緒菜、探してこいよ、そろそろ昼になるぞ」



「悠登……、うん。」


もし真人先輩の言う通り、慶吾先輩が一人でいるなら、お弁当を渡すまたとない絶好のチャンスだ



私は悠登から渡された二つのお弁当を持って走り出した。