窓から外を見ると、吉田の姿がなかった。


「おい、吉田消えたけど」

「帰ったんじゃない?それとも暑くて溶けちゃったとか…」


里緒菜はゲームのコントローラーを握り、画面を見たまま気にする様子もない。


…ヒトゴトかよっ



―ピンポーン



―ピンポーン




「はいはいっ」




玄関を開けると


溶けたはずの吉田が立っていた。


「柳〜っ」


「おっおう、どした」

「里緒菜どこにいるか知ってるか?夏期講習なんかとっくに終わってる時間なのに、まだ帰ってこないんだ」


「そっそんなん俺が知るわけねぇだろ〜」


「幼馴染みなんだろ?里緒菜の行きそうなところとか教えてくれよ… 」


「まっまぁ落ち着けよ」



リビングのエアコンをかけて、吉田を案内した。


「…実はさ、俺…里緒菜と別れたんだ。」


知ってる…


「いきなり別れようって言われてさ、原因聞いても教えてくれないんだ。」


…靴下だよ…靴下



「大事にしてたんだ…。…それがいけなかったのかな…。里緒菜みたいな恋愛慣れしてる子には、もっと強引にするべき…」


「それは違うっ」


吉田は急に大声を出した俺を、驚いた顔で見た。


強引に押し倒したりしたらもっと別れるのが早くなるだけだ。


だってあいつは…


恋愛大好き 小泉里緒菜は、恋に恋してるだけで、男心なんかわかっちゃいないんだ。


あいつを攻略しようなんて百万年早いよ吉田…。