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南塔の三階にある生徒会室まで里緒菜はうつむいたままだった。



ドアの向こうからは騒がしい話し声が聞こえてくる。





「悠登…ごめんね…私が無理矢理お願いしたのに」


「いつものことだろ、もう慣れたよ」


「…いつものこと、か…ほんとだね」


「そこで納得すんなよ」

「ははっ」




里緒菜が笑ったら、学級委員になったこととかどうでもよくなってきた。




「慶吾先輩まだ来てないのかな…」



里緒菜は気付いてないらしい




広い生徒会室の最前列、女の群れの中心に慶吾先輩がいる。



その隣にも同じような群れが一つ

恐らく真人先輩だろう



「あそこじゃね?」


「………すごい…」


「あれじゃ顔見知りになる前に卒業だな」




慶吾先輩が里緒菜のこと相手にするわけないって


里緒菜が先輩と顔見知りになる前に、俺が里緒菜の理想の男になってやるって


そう思ったのに




「憧れだから…先輩は。本気で相手にしてくれるなんて思ってないよ…」



そう言った里緒菜の顔が、悲しそうで、胸が痛かった。


先生が来て、一気に散らばった女の群れ、クリアになった視界に飛び込んだ色男の姿。



その時、その影が席を立ち、ゆっくり振り返った。



振り向いた敬吾先輩が俺たちをロック・オン



いや…里緒菜を見た。


そして


両手を立てて、頭に乗せた。


…何だあれ?


その答えを、隣で里緒菜が言った。



「あ…うさぎ?」


慶吾先輩はかっこよすぎる笑顔で里緒菜を見てた。