え…と、南塔の一階の…



担任の説明だと確かこの辺にあるはず


でもそこには資料室らしき部屋は見当たらない。



重たい段ボールのせいで、腕がもう限界だよ


周りに人なんていないし…、今更こんなの持って引き返せないよ〜



その時…天の声が



「どうかしたの?」


「あの、資料室…っ」



…!!



心臓が止まるほどびっくりするってまさに言葉通り、私の後ろに慶吾先輩が立っていた。



あわゎ…




「資料室ね…ここの二階」

慶吾先輩は、私の手から軽そうに段ボール箱を持ち上げて、私の前を歩き出した。


ふわっといい香りが、鼻を掠めた。


マリン系の香水…


ボーっとしたまま、慶吾先輩の後ろから資料室に入った。


「ここに置いとけば平気だろっ」


「あっありがとうございました」

「どういたしまして、君、入学式で俺がスカーフ直してあげた子だよね」


覚えててくれたんだ。


「はいっ小泉里緒菜です」


別に名前を聞かれたわけじゃないのに勢い余って自己紹介…


「ぷっ、ははっ」


笑った笑顔もかっこいい…



「それじゃ失礼しますっ」




笑われたことよりも、二人きりの状況が恥ずかしくて、慌てて資料室を出ようとした、その時…


床のワックスに上履きが滑った。