「でも、亜梨紗ちゃんのことは?
……好きなんじゃないの?」


そこで、遥の目が大きく開く。


「凌…そんなこと思ってたの?」

「………」

さっそく自分の発言に後悔し始めた私は俯く。


すると遥はもう一度私を呼んだ。

“凌”



「俺は 凌が好きだよ

それだけは疑わないで
これだけは信じて

亜梨紗をそんな目で見たことは
これまで一度だってない」


きっぱり、力強く 遥は言い切る。
その言葉が泣きそうになるくらい嬉しいくせに、私は受け入れようとしない。


「そうだとしても、亜梨紗ちゃんは遥じゃないと駄目だからって…」


困ったように、悲しそうに微笑むばかりの遥。
当たり前だが、そこにいつもの無邪気な笑顔はない。


(…そうさせてるのは私か)



「それも違う。亜梨紗にはちゃんと大事に想ってくれてる奴が傍にいるし、亜梨紗も同じ気持ちなんだ」

「え…」


「それに、もし仮に亜梨紗が本当に俺を好きだったとしても。俺は凌のことが好きなんだからどうにもならない」

「……」


確かに、遥の言う通りだ。


(私は何が言いたいんだろう)



「…………」

黙り込む私に、遥は優しく微笑んだ。


「俺は昔から一緒にいたし、家族みたいなもんだ。それが急にほったらかされたからムキになってただけ」


「……そう…かな、」


「凌は優しすぎるな」


(……?)