ただ、まっすぐ私に向けられる遥の視線に思わず目をそらす。


「だから…」

腕を引かれフワッと、強く抱きしめられて
私はなぜか泣きそうになり唇を噛み締める。



「だから凌…もう1回、俺を見て」


「…っ………」

胸が痛い程締め付けられる。



「……凌…「「っ…いや!」


大好きな遥の胸を精一杯押し返す。


「やだ、やめて…
もう遥なんて好きじゃないっ」


ひどく傷付いたような顔をする遥に、また下唇を噛む。

でも、もう辛い恋ならしたくない。



「……うん。分かってる…ごめんな」

“コレはただの、俺のわがままだ”


押し返す私の手に従うように離れてしまう遥が、悲しくて。


「……遥「「でも」


思わず出てしまった私の声は遥のそれに消されて。



「でも もう一度だけ俺を信じてほしい。

もう一度、
俺を好きにならせてみせるから」


今度は今までで一番強く。
切ないくらいに強く抱きしめられた。




「…もう…わけわかんないよ」

もうすでに私は声が震えるのを隠すことだってできない。


「ごめん」

"…でも好きなんだ"



間違いなく遥の腕の中で
間違いない遥の声。





ねえ、そんなわがまま



どうしようもなく愛おしい。