コツン…コツン…とゆっくりめの足音が聞こえ、音のするほうへと顔を向けた。
その時夜だったので、誰なのか暗くてよく見えなかった。
また、どっかの酔っ払いだろうと僕は勝手に思いこみ、視線をパンのほうへと戻した。
この辺は夜になると、昼間の賑やかな繁華街とは打って変わって、夜の顔へと一変する。
昼間は静寂していた飲み屋街が明るい光を放って、人々を誘う。
その誘惑に負けた人々が酔いしれ、酔っ払いが増える。
たまに酔いすぎて、方向も判らないまま、この何もない狭い道に迷い込むことがあった。
だから、僕はあまり気にもせずにいた。
ーーだけど……