駅の改札。 迎えに来てくれるなんて、思ってもみなかった凌が視界に入ったときは、すごく嬉しかったのだけど。 「えっと…凌っ… 何っ? …っと…」 何を怒っているのか、怖い顔をした凌は一言も発することなく、あたしの手首を握ってくるりと背を向けた。 ――そう、あたしを送ってきてくれた渡瀬くんから。 この場に、そんな男の子なんか、存在しないかのように。 ――どうしたの? ――凌… そんな、乱暴気味にあたしを引きずる凌にびっくりしつつも、あたしは、顔だけ後ろに向けて渡瀬くんに声をかけた。