「彼氏は、今日、ここに来ていることを知ってるの?」

「……いえ、話していません」


「本当に彼氏がいるのか、ちゃんと確かめないと信じられないな」


「―…ッ。嘘じゃないです。彼氏は本当にいます。信じられないなら、今から電話してみましょうか?」


声が震える。涙が溢れそうだった。


「……本当に?」


ゆっくりと頷く。


始めは、なかなか納得のいかない様子だった大越くんも、あまりに素っ気ない私の態度に諦めがついたのか、渋々了解したような形だ。 


肩の荷が下りたようにホッとした私は、それまで一滴も口にしなかった飲み物に手を付けた。 


ゴクン、ゴクン……と、勢いよく、アイスティーが喉を流れていった。 


これからは大越くんのことを考えなくて済む、というだけで、心が軽くなった瞬間だった。



そして、新たな恋――…


伸也さんとの穏やかな日々を大切にしよう、と心に誓った日でもあった。