「ちょっと莉那!」
ちょっと怒った顔で結衣があたしのところに来た。

「な、なに?」

「なんであのとき階段降りたの!
もー…藤崎君の好きな人聞くチャンスだったのに!」

「…あ。ごめん…」
「まぁいいけどさ…それより、大丈夫だった?」
「なにが?」
「だからッさっき谷口さんに聞かれてたじゃん!ちゃんと聞こえてきたけど…」
「あ…うん。大丈夫だったよ。びっくりしたけど…」

「だよね…なんか雰囲気怖いんだもん」
「あははッ喧嘩とかじゃないからさ」

「ああッッ!!」

結衣が大声で何かを思い出したかのようにあわてている。

「なッどうしたの!?」
「結衣ね!莉那に言わなきゃいけないことあったんだ!」
「ん?」
「ねぇ、莉那彼氏ほしい?」

「へ?」
「いいから!ほしい?」
「そりゃぁ…まぁね」

「実はね、結衣の男友達に「哲」っているの。
その男子が莉那のこと気に入っちゃって。
紹介してって言われたからさ…。
あッ性格は本当にいいやつだよ!女の子にもモテるし!

…会ってみない?」


「でも…」

あたしは将平のことが今も好き…
けど、この行き場のない恋はこの先どうなるんだろう…

「大丈夫!全然怪しくないし…中学でもモテていたんだよ?
今も結構モテるし…。すごい優しいやつだよ!
じゃないとあたしが紹介するわけないもん!」

「あははッ…そっか…ありがとう」
「え!?いいの?」

もう、このまま想っててもきっと何も変わらない。
それなら他の恋に進んで、大切な人を見つけたい…

「結衣の頼みなら良いに決まってるよ!」

「莉那ー!ありがとッ
さっそく今日の放課後あわせるから!」

「今日!?」
「うん♪あ、同じ学校だよ?クラスは1組。遠いから莉那は分からないかもね。」
「そうなんだ…あたし達のクラス5組だもんね」
「あ!結衣、先生に呼ばれてるんだった!!じゃぁまた後でね!」
「うん!」

紹介とか期待なんてしないけど、今はもう前に進みたい。


そう思いながらも、将平の谷口さんへの告白の返事は最終的にどうなったのか気になっている自分がいて悔しかった。