「体育の授業でコケたんだよ」

「結城くん、体育って余り好きそうじゃないよね」

「俺のこと、鈍くさいって思ったでしょ」

「そんなことないよ!」


 手まで振って必死に弁解する姿が可愛いな、なんて思っていると、沢木さんはキョロキョロと辺りを見回し始めた。


「先生なら居ないよ。来るの待てないなら、ココに名前書いて適当に備品使っちゃっても大丈夫だけど」


 俺は机の上の利用者届けを指さして、沢木さんに視線を送る。

 何だか少し顔が赤い。

 風邪でも引いてんのかな。


「あ、あのね……」

「何か必要なら探そうか? 俺、去年保健委員だったからある程度なら分かるけど」

「あたし結城くんが好きなの!」

「へ?」


 思わぬ言葉に、変な声しか出なかった。


「彼女、居る?」

「……いない、けど」

「じゃあ、付き合ってくれる?」

「……いい、けど」


 俺の返答ににっこりと笑った彼女は、「放課後、校門の前で待ってるね」とだけ残して保健室から出て行った。