公園でバスケをしていると絵美がきた。

俺はバスケをやめて、二人で近くのベンチに腰掛けた。


「和真、あげる」


予想どおり、ドロップスの缶が差し出された。


「うわ、いらね」


中身はやっぱり全部、ハッカ。

そんなこと言いながらも俺は一粒口に入れた。

勝手に俺を枕にして寝だした絵美を見て、ため息をついた。




三年前、絵美はドロップスの缶を開けた。

事故から半年たって、ようやく。


絵美が俺の手のひらに最初のドロップを落とした。

それがハッカだった。


「貸してみ」


俺は絵美の手のひらにドロップを落とした。オレンジ色のドロップ。




あの日から事あるごとに絵美は俺にハッカのドロップをくれた。

俺、ハッカはそんなに好きでもないんだけどな……

絵美のほっぺたをつついた。


「有り難迷惑だよ、バカ」


本気は絵美から貰えるのが嬉しかったりする。

俺の特権だから。

口の中のドロップを噛み砕いて、もう一度缶を振った。

コロンでてきたのはオレンジ色のドロップ。

こういうサプライズがあるから憎めない。


絵美の幸せのドロップ、
俺にくれるから。