部屋を出るとトーストの焼ける匂いがしていた。
お母さんは“おはおう”とトーストを頬張ったまま言う。
「今日から?」
わたしのスポーツバッグを見て訊いてきた。
「うん」
「無理しなくていいからね」
「大丈夫。わたしバスケ好きだから」
わたしはお弁当を持って家を出る。
「明日音、好きなことは本気でやりなさい。勉強もしなきゃだけどね」
わたしは笑って頷いた。
「いってきます」
空を見上げた。
飛行機が長い、白い、飛行機雲の先頭を引っ張っているのが見えた。
雲はまっすぐに伸びていた。
どこまでも、
まっすぐに。
(完)