元井さんは帰り際にバイバイと手をふって、それから“佳奈でいいよ”と言ってくれた。
絵美ちゃんはいつの間にか教室からいなくなっていた。
部活……どうしよう
いじめそのものは終わったわけじゃない。
いいや、帰ろう
教室から出ようとして、中に入ってこようとした人にぶつかってしまった。
「あ、悪い」
栗本くんだ。
同じクラスになったことはないけど、この人は知っている。
明るくて、かっこよくて、運動もそこそこできて……もてる。
「んー…あんた間宮さん?」
「へ?あ、はい、そうです」
なんで知っているんだろう。
「絵美に聞いた。いじめられてんの?」
何も言えなかった。
他のクラスの人が知っていることがショックだった。
「ま、いいや。絵美は?絵美はどこ行った?」
栗本くんは教室の中に入って絵美ちゃんの机の中を調べていた。
「さあ…気づいたらいなかった」
そんなことしていいのかと疑問に思いつつ答えた。
「じゃ、いいや。ありがとな」
栗本くんはあっけなく行ってしまった。