一瞬意味がわからなくて、へっ?、という顔をしていたに違いない。
絵美ちゃんはわたしの返事も待たずに歩きだした。
「あの、松藤さん、どこ行くの?」
わたしは慌てて追いかけて、絵美ちゃんの隣に並んだ。
絵美ちゃんはわたしの方を振り向きもせずに言った。
「“さん”付け嫌い。名前でいいから」
「絵美ちゃん…どこ行くの?」
言い直してみた。
絵美ちゃんはわたしの方を見て、ふふっと笑って、着いてくればわかるよと言った。
それから一切会話もせず二人で並んで歩いた。
前々から思っていたけど、絵美ちゃんは美人だ。
かわいいよりも綺麗のほうが似合う。
でも、特に可愛く見せようとしているわけじゃないのに、多分、いつもオシャレを頑張っている、深秋や千英なんかより、ずっとかわいい。
眉は剃ってないし、スカートも校則どおり……
そんなことを考えていると、不意に絵美ちゃんは立ち止まった。