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「メガネくん」


校門を出たところで聞こえた自分を呼ぶ声に、無意識に顔が綻ぶ。



僕のもとへ駆け寄る満里奈先輩を、眩しそうに見つめるたくさんの視線


当たり前のように組まれた腕に顔が熱くなる。


「ふふっ、茹でダコみたい」


「誰のせいですか…」


「このくらい付き合ってるなら当たり前だよ?」


悪びれもなくそう言った満里奈先輩は、さらに距離を縮めて笑った。

「…もうすぐ夏休みか、練習きつくなるね」


「そうですね」


「…メガネくんには感謝してるんだ。私のワガママに付き合わせちゃって」


「わがままだなんてそんなっ」


急にセンチメンタルになるのはズルいと思った。


明日の試合で、満里奈先輩はマネージャーを辞める。

僕達の関係が終わるんだってことを宣告されてるみたいだ。


思えば夢みたいな話だった。



いつも満里奈先輩の隣には誰かいて、高嶺の花どころか、笑いかけてもらえることが奇跡みたいな、そんな存在だったから。


そんな彼女の隣を歩けるなんて、夢じゃなければなんなんだろう