マリアからだった。ジョージは珍しく捕まらない彼女の家に、ついさっきも電話をいれたばかりだった。
「マサヤすまない。急用が入った。帰りはジョンかフレッドを迎えによこす」
ジョージは妹の手前、嬉しさを極力隠してそう言った。その演技はあまりにぎこちなくて、僕はターミーにバレやしないかと冷や冷やした。
「オーケィ、ヤングレディは僕に任せて用事を済ませてくるんだな」
僕は冷静に言った。
部屋の鍵はとっくに渡しておいた。
「兄さんラッキーだったわね」
僕とジョージはドキリとしてターミーを見た。
(まさかマリアのこと気づいているとか?)
「ビール漬けにならずに済んで!」
彼女が残念そうに言った。
ああ、そういうことか。
ジョージがそそくさと退散した。