「恋人?」
「今頃、俺の部屋にジョージの彼女が訪ねて来ている筈だ」
「へぇ、じゃあ彼の社長就任も近いですね」
僕が言うと、和樹は顔を曇らせた。
「それが、今の恋人とは結婚出来ないんだ」
「何故ですか?何か問題でも?」
「彼女はフィリピン人なんだ。国のジョージの祖父母は、ファミリーに中国人以外の血が入る事を嫌っている」
和夫はため息交じりにそう言った。
「おまけにジョージは資産家の息子。彼女は貧民地区の出身だ。だからジョージは彼女と結婚出来ない」
「そんな、今時・・・」
「事実だよ。だから二人は隠れて逢わなければならないし、俺は極力セブにいる時は協力してるよ。彼女は奥さんになれなくてもいい、つまり愛人で一生過ごす覚悟だと言っているんだが、どうにもジョージの奴が承知しないんだ。しかし、ジュディには言えないんだなぁ」
「大変なんですね。僕は、何て言ったらいいか、その、里美と平和に過ごしているもので」
「はっはっは、俺も妹がジョージの彼女のようだったら切ないがな。君で本当に良かったよ雅也君」
和樹はそう言って、スコッチの濃い水割りを乾杯の仕草で揚げた。
その時、電話のベルが鳴った。